先日、尖閣諸島沖で中国海警局所属の公船四隻が領海内へ侵入し、うち二隻が日本籍の漁船を追跡するという事件が起こったことはニュースなどを通して多くの方が知っていると思います。
しかし、中国海警局所属の艦船が日本の領海侵犯を繰り返していることは、マスコミの情報操作によってあまり報じられていないので知らない方も多いでしょう。

尖閣諸島は比較的台湾(中華民国)寄りにある日本の諸島で、地下資源が確認されると中国側は領有権の主張を強め現在に至ります。また、地下資源だけでなく軍事的にも中国の定める第一列島線に該当し、太平洋進出を目論む中国からすると、のどから手が出るほど欲しがっているのではないでしょうか。

では、その尖閣諸島(主に最南端の魚釣島)の現実的な防衛体制はどういったものかを考えていきたいと思います。



一、自衛隊の配備

多くの方が口を揃えて自衛隊配備を叫んでいますが、自衛隊配備はあまり得策ではありません。というのも、敵の攻撃を事前察知できていれば対処は可能ですが海警局公船のような小型艦船一隻で侵入し近距離からの艦砲射撃やミサイルなどによる奇襲攻撃の場合は立地的に不利になる場合があります。逆に言うと、もし中国軍が占領しても奪還しやすいというわけです。
いわゆる、「攻めるは易し、守るは難し」ですね。
さらに、現在のままでは中国は表立って軍隊の派遣はできない状況ですが、日本側が自衛隊を派遣すれば、大義名分ができ、軍隊派遣の可能性が高まります。そもそも、『自衛隊』は国内法では軍隊ではありませんが、世界ではトップクラスに入るほどの実力を備えた『軍隊』として認識されています。ですので、尖閣諸島に自衛隊を配備すると「日本が先に軍隊を派遣した」という言いがかりをつけることが可能になるわけです。当然、中国側は交戦権を持たず防戦一方の『自衛隊』であると理解しているからこそできることです。
あくまで、
中国海警局《CHINA COAST GUARD》は軍隊の管轄下にあるものの海上法執行機関を統合した機関として、海洋調査や漁業監視、警察活動を目的としています。なので、日本の海保と同様に領海内の治安維持のための機関として、領有権主張のためのアピールに使われることも多く、尖閣諸島近辺の領海侵犯もある意味、軍隊が出張ってくるまではただのアピールと思われます。
そういった理由で自衛隊配備は現実的ではないことが伺えます。
(個人的には対空レーダーや対潜哨戒網ぐらいは作ってもいい気はしますが・・・)


二、滑走路・港湾の整備

現在、尖閣諸島は日本政府が所有しています。ですので、滑走路建設や港湾の整備を計画のは簡単です。しかし、実際に建設・整備するのは入札した民間企業ですので、入札されるかや海外企業による介入などの不安があります。
なにより、継続して維持管理を行うことが困難です。
特に滑走路は海保所有の航空機なども燃料的に余裕があり立ち寄る必要はありませんのでほぼ利用価値はありません。港は海保や海自の船舶の停泊が可能になりますが、停泊中は無防備になりますので、おそらく停泊することはないでしょう。その他の利用法は後述します。


三、在日米軍の演習場化

日本に対応能力がないなら米軍を配置すればいい。これは意外と理にかなっていると思います。米中による新冷戦の牽制としてはいいかもしれません。しかし、米中の偶発的衝突の危険性も伴うので米国側が拒否する可能性はないとは言い切れません。さらに、現在ロシアと領有権を巡って交渉を進めているロシアからの北方領土返還はより遠ざかってしまうでしょう。


四、公的施設の設置

市役所や図書館などの設置というわけではなく、研究所や観測所などの公的機関を配置するということです。しかし、これも現実的ではなく移動や駐留の安全を保障できません。
海保による監視所の設置も同じく工作船には対処できないでしょうから現実的ではありません。
施設ではないですが、建造物として日本製の灯台の設置や竹島に違法に設置された国旗のように日本をアピールできるものは安全かつ国際的な広報にはなると思います。

五、民間施設の設置

一番現実的な話としては、漁業組合の設置です。この場合、新規ではなく、漁期などの限定的な利用になります。しかし、これには港が必須です。
また、一般企業や北方領土に設置されたような加工工場などもできないことはないですが、
特に、工場などを運営するにはそれなりの従業員と集落形成が必要になります。中国のような強制移住を行えるような国や余程の資金を持っている企業でないとそれは難しいでしょう。利益を最優先とする一般企業としてはあまり現実的な話ではありません。


まとめ

結論から言うと、防衛体制は今のまま継続することが一番いいと思われます。
それよりも、政府が外交面で領有権の主張を強めることが第一でしょう。