中国は、自分より国力(軍事力)が低いと思う相手には強く出る傾向があります。
今回のオーストラリア・中国間での対立もこうした影響が強いでしょう。では、どうして豪中間で対立が深まったのか、また、両国の戦略や対応はどうなっているのかを見ていきたいと思います。

一、豪中対立の原因

一番の理由は、中国政府のオーストラリアへの内政干渉でしょう。オーストラリアの労働党議員サム・ダスティヤリ氏の政治スキャンダルが発覚した際、中国共産党とつながりのある中国人富豪との癒着も発覚しました。これをきっかけとして大規模な調査が行われた結果、オーストラリアの主要政党には中国人や中国系オーストラリア人(華僑)がメインスポンサーになっていたことがわかりました。
さらに、政党だけではなく大学や企業、メディアなどにもその手は広がっていました。そうした事実から、オーストラリア全土で中国に対する危機感が強まり、同時に中国もその事実を否定し、内政不干渉を貫いていると言いながらも態度を硬化させていきました。
また、新型コロナウイルスの発生源特定を求めるアメリカに同調し、独立調査を要請したことやファーウェイの排除なども一因と言えるでしょう。


二、中国の対応と戦略

中国政府は、新型コロナウイルスによる人種差別と暴力を理由に、オーストラリアへの渡航自粛を呼びかけました。しかしこれは、オーストラリア観光や留学を事実上禁止することでオーストラリアでの経済効果を減少させる狙いがあるとみられています。さらに、オーストラリア産の牛肉に報復関税をかけることによって、オーストラリアへの経済制裁を行い、自国に有利な条件での譲歩を引き出し、短期間で終結させるつもりであると思われます。

三、オーストラリアの対応と戦略

オーストラリアの主要貿易品と言えば「鉄鉱石」です。世界最大の産出量を誇るオーストラリアからの鉄鉱石を輸入しなければ、世界最大の鉄鉱石消費国である中国の経済にも打撃が出るため、報復関税がかけられることはないとみられます。逆にこの立場を利用する手以外ないでしょう。
戦略としては、オーストラリアへの内政干渉に関しては、世界各国が注目しているため、国民の意思次第では長期戦へ持ち込むことも可能です。

四、周辺諸国との連携

先ほども述べた通り、豪中問題に関しては世界中の関心を集めています。特に、カシミール地方での国境紛争中のインドや南シナ海での海洋問題を抱える東南アジア諸国、貿易問題が残るアメリカや、長年交渉を重ねていた日豪軍事同盟の成立への大筋合意が成されたとの報道もあり、対中国への牽制力は抜群でしょう。
一方で、中国ですが近隣諸国と問題を起こしすぎている状況下でのロシアや南北朝鮮以外との連携は難しいと言えます。

まとめ

互いに、戦略物資や手段を保持している国同士のため、そこまで激化することはないと思われます。
それよりも、この豪中問題を日本のメディアが『オーストラリアでの人種差別の懸念』へとすり替えていることに危機感を持たなければなりません。日本も政党やメディアは手遅れと言えるほど中共の手が回っているでしょう。